ヤマハ音楽教室講師歴25年以上の経験を持つピアノ講師が音楽について語ります。
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今回は、「ワルツ」と「ポルカ」について、
どんな音楽なのか、を掘り下げていきたいと思います。
「ワルツ」とは?
ワルツとは、3拍子を基本とする音楽。
そのリズムは、「1、2、3、1、2、3」と軽やかに続く特徴を持っています。
この3拍子のリズムは、ゆったりとした優雅なメロディを持つことが多く、
舞踏音楽として発展してきました。
下のプレイリストは、ヨハン・シュトラウス2世のワルツを集めたものです。
下のプレイリストは、アリス=紗良・オットさんのショパンのワルツ集になります。
ワルツの背景
ワルツは18世紀後半から19世紀にかけて、特にオーストリアやドイツで発展しました。
その名前はドイツ語の「wälzen(回転する)」に由来し、
踊り手がクルクル回転する様子をあらわしています。
日本語でも「円舞曲」と訳されることが多いですよね。
ワルツと一言でいっても、地域やスタイルによって若干の違いがあります。
ジャンルとしてのワルツには、ヨハン2世の「美しく青きドナウ」や
「ウィーンの森の物語」などの舞踏音楽としてのワルツがあり、
ショパンのワルツのようなクラシック音楽の形式としてのワルツもあります。
演奏される場所や目的が少し違っている、といった感じでしょうか。
ウィンナーワルツとの違いはあるの?
「ウィンナーワルツ」は、19世紀にウィーンで発展した舞踏音楽の一種で、
とくにヨハン・シュトラウス1世とヨハン・シュトラウス2世によって
洗練されたのが、ウィンナーワルツです。
これは舞踏会で踊るためにつくられた華やかで軽快なワルツを指しています。
ウィンナーワルツの特徴
従来のワルツよりもテンポが速い。
3拍子のリズムは同じですが、「1拍目がやや強調されて、2拍目3拍目が軽やか」に進むことが多く、流れるような踊りやすさが特徴となっています。
音楽の構造は、序奏ではじまり、その後にメインのワルツが続き、
最後に華やかなコーダ(終結)を迎えるものが多いです。
従来のワルツとの違い
ウィンナーワルツは舞踏音楽として特化していること。
社交ダンスとして踊られていることを主な目的としています。
一方で、ショパンなどのワルツはピアノやオーケストラのための楽曲であり、
演奏を楽しむことが目的です。
またテンポや雰囲気も少し違いますね。
ウィンナーワルツは少し速いテンポで演奏され、躍動感があります。
ショパンのワルツは、ゆっくりとしたものや、詩的で内面的なものが多いような気がします。
ウィンナーワルツの代表曲
ヨハン・シュトラウス2世
- 美しく青きドナウ
- ウィーンの森の物語
- 皇帝円舞曲
ヨーゼフシュトラウス
- 天体の音楽
ヨハン・シュトラウス1世
- ラデツキー行進曲
ウィンナーワルツの魅力は、単なる舞踏音楽にとどまらず、
ウィーンの伝統と文化を象徴しているものです。
ニューイヤーコンサートでの演奏は、世界中の聴衆にとって、
お祝いと希望を与える特別な意味があるような気がします。
「ポルカ」とは
「ポルカ」は速いテンポと2拍子(4分の2拍子)を特徴とする音楽。
チェコ(ボヘミア)地方にルーツをもつ舞踏音楽です。
名前の由来は、諸説あるようですが、
チェコ語で「半分」という意味の「půlka」から来ており、
踊りのステップが小刻みで軽快であることに関連しています。
ポルカは19世紀にヨーロッパ全体に広まり、
とくにオーストリア、ドイツ、などで人気となりました。
舞踏会や祝祭での踊りとしてだけでなく、
演奏会用の音楽としても使われるようになりました。
下のリンクの音楽は、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏する
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」です。
ポルカの特徴
2拍子が基本。
軽快で跳ねるようなリズムが特徴で、
踊り手が軽やかに動けるようなテンポが取られています。
雰囲気は、楽しい雰囲気で、
祝祭的な場面やユーモラスで活気のあるシーンで演奏されます。
ポルカの背景
ポルカは1830年代にボヘミア(現在のチェコ)で誕生し、
1830年代後半にはヨーロッパ各地に広まりました。
ウィーンでは、シュトラウス一族やレハールなどの作曲家が
オーケストラ向けに華やかなポルカを作曲し、
ニューイヤーコンサートなどでも定番のジャンルとなっています。
ポルカは、もともと庶民の踊りとして親しまれていましたが、
洗練されたアレンジにより、宮廷や社交界でも採用されるようになりました。
ポルカの種類
ポルカといっても、いくつかの種類があります。
ご紹介したいと思います。
ウィンナーポルカ
ウィーンで発展したポルカ。
シュトラウス一家による華やかなオーケストラ作品が代表的です。
ポルカシュネル(速いポルカ)
特に速いテンポで演奏されるポルカ。
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」などが有名です。
ポルカフランセーズ(フランス風ポルカ)
ポルカの中でも特に優雅な雰囲気を持つ。
その他にもいくつかありますが、代表的なポルカをあげました。
ポルカの代表曲
ヨハン・シュトラウス2世
- 雷鳴と稲妻(ポルカシュネル)
- トリッチ・トラッチ・ポルカ
- 観光列車
ヨーゼフ・シュトラウス
- 小さな水車(ポルカフランセーズ)
- 鍛冶屋のポルカ(ポルカフランセーズ)
ポルカの楽しさは、ワルツの優雅さに比べて、
より庶民的で活気にあふれた音楽です。
その軽やかなリズムと跳ねるようなテンポは聴衆を明るい気分にさせ、
お祝いムードを盛り上げてくれます。
まとめ
踊りの音楽としての代表でもあるふたつの音楽について、
ご紹介しました。
それぞれの形式が生まれた背景や音楽的な特徴を知ると音楽の幅がぐんと広がります。
ワルツやポルカのように親しみやすい形式から、
ソナタ形式やフーガのような知的な構造の魅力まで、
多様な音楽に触れることで、新たな発見や感動が得られるでしょう。
音楽は単なる娯楽を超えて、
時代や文化、人々の心を映し出す鏡です。
形式やジャンルに目を向けることで、
ひとつひとつの楽曲に秘められた物語や背景をより深く楽しむことができるはずです。