【ピアノ講師が本音で解説】リビング練習vs個室練習、どちらが上達する?

リビングピアノが増えている今
最近、多くのご家庭で「ピアノをリビングに置いています」
という声を聞くようになりました。

 

生活空間の一部として、いつでも弾ける環境があるのはとてもすてきなこと。

 

家族のそばで安心して練習できるというのは、
特に小さなお子さんにとって大切な要素だと思います。

 

ピアノ講師歴25年以上のわたしが、
はっきりと感じていることがあります。

 

それは、「ピアノをどこに置くか?」という、
一見とてもシンプルで身近なことです。

 

最近は「リビングにピアノを置いています」というご家庭が増えています。

 

家族の目が届くから安心、生活の一部として自然に弾ける・・・。

 

たしかに、そのような理由でリビング練習が選ばれるのはよくわかりますし、
わたし自身も、それを否定するつもりはありません。

 

でも、本当にそれが子どもの集中力や、音楽と向き合う力を育てる上でベストな選択なのか?

 

長年にわたって多くの生徒さんと向き合ってきたからこそ、
ここに見落とされがちな「上達を左右するカギ」があると感じています。

 

リビング練習のメリットとよくある理由

実際に、リビングにピアノを置くご家庭には次のような理由があります。

  • 子どもの様子を見ながら練習を見守れる
  • 部屋が限られていてピアノ専用の空間が取れない
  • ひとりだとサボるので、目の届く場所に置いておきたい
  • 家族の中にピアノ経験者がいて、一緒にアドバイスできる

こうした理由から、「リビング練習=家庭のスタンダード」になっている側面もあると思います。

 

たしかに、子どもにとって安心感のある空間で練習することは大事なことです。

 

また、音楽が家族みんなにとって身近であるという環境づくりにもつながります。

 

でも、本当に集中できている?ピアノ講師としての実感

それでも私には、長年の指導の中でどうしても気になってきたことがあります。

 

それは、

リビングで練習している生徒さんより、
別の部屋でひとりで練習している生徒さんの方が、
明らかに進歩が早い傾向がある

という、講師としての実感です。

 

もちろん、すべての子どもに当てはまるわけではありません。

 

性格や練習量、ご家庭の関わり方によっても変わってきます。

 

ですが、“どんな空間で練習しているか”が、集中力や音への向き合い方に大きく影響していると感じる場面は、これまで本当にたくさんありました。

 

たとえば、リビングで練習している子には、次のような様子がよく見られます。

  • テレビの音が気になって、ついそちらに目が向いてしまう
  • きょうだいが話しかけてきて、集中が切れる
  • 親がアドバイスしたくなり、練習中に声をかけてしまう
  • 「見られている」という意識が抜けず、音に没頭できない

一方、扉のある部屋や自分の空間でひとりで練習している子は、

  • 時間の流れ方がゆっくりになり、音を丁寧に聴いている
  • 曲の途中で立ち止まって考える余裕がある
  • 弾きながら自分で修正しようとする力が育ちやすい
  • 間違えても誰にも気づかれないから、思いきりチャレンジできる

 

これはつまり、“音と自分しかいない空間”で、
集中の深さがまったく違ってくるということです。

 

 

ひとりで弾ける空間がもたらす3つの効果

1. 集中力の質が上がる

ピアノの練習において、最も大切なのは「どれだけ長く練習したか」ではなく、
どれだけ深く集中できたかです。

 

誰かの視線や生活音がある中では、
子どもはどうしても“外”に意識が向きがちになります。

 

一方、静かな空間にひとりでいると、
自然と“内側”に意識が向かい、音に耳をすませたり、
「どうやったらもっと上手に弾けるかな?」と、考える時間が生まれます。

 

これは大人でも同じですが、
ひとりになれる時間こそが、思考を深めるきっかけになるのです。

 

2. 自立的な練習が育つ

誰かが横にいると、「正解」を求めてしまいやすくなります。

 

でも、ひとりで取り組む時間は、
自分で考え、自分で工夫する練習の時間です。

 

ミスしても誰にも見られていないからこそ、
何度もトライできる。あきらめずに向き合える。

 

この「試行錯誤を重ねる姿勢」が、
結果的に大きな上達につながっていきます。

 

練習というのは、ある意味“ひとりで静かに粘る力”を育てる営みでもあります。

 

3. “聴く力”が育まれる

ピアノは、「音を出すこと」よりも「音を聴くこと」の方が難しい楽器です。

 

そして、「聴く」という行為は、とても静かな時間の中でこそ育まれるものです。

 

リビングでは、テレビの音、きょうだいの声、生活の気配など、
無意識に“耳を使いすぎている状態”になります。

 

それは、「音楽のニュアンスを感じ取る」力を育てるうえでは、
不利に働くことも少なくありません。

 

静けさの中で、音の余韻や呼吸に気づけるかどうか。

 

それは、音楽そのものを深く味わう感性にもつながっていきます。

 

家庭でできる、練習環境のちょっとした工夫

もちろん、すべてのご家庭に「ピアノ専用の部屋」があるわけではありません。

 

ですが、ちょっとした工夫で、練習の質はぐっと上げられます。

 

たとえば、

  • パーテーションで視線を遮る
  • 練習中はテレビを消す/声をかけない時間にする
  • きょうだいがいる場合は時間帯をずらす
  • 「練習中はひとりの時間」として、そっと見守るスタンスを取る
  • 練習後に声をかける時間を設けて、“見守っている”ことはちゃんと伝える

 

また、お子さんが小さいうちは、リビングで一緒に練習するのもいいと思います。

 

安心できる空間で親子のやりとりをしながら音楽に触れることは、
最初の一歩としても大切です。

 

ただ、少しずつ成長してきたら、
静かに集中できる空間で、ひとりで練習する時間も大切にできるといいですね。

 

ピアノを別の部屋に移動するのが難しければ、
練習中だけ静かな空間をつくる、
パーテーションで仕切る、など、段階的に“ひとりで音と向き合う環境”へとシフトしていくことをおすすめしています。

 

こうした少しの意識で、ピアノの上達だけでなく、
自分で考え、取り組む力も自然と育まれていきます。

 

大切なのは、「ひとりで練習する時間」を応援しているよ、
という姿勢を、子どもにわかる形で伝えてあげることです。

 

音と向き合うための“静けさ”を大切に

ピアノの練習は、ただ音を出すだけの時間ではありません。
自分の内側に耳をすませ、ときにうまくいかない自分とも向き合いながら、
コツコツと積み重ねていくものです。

 

私自身、子どものころは完全に扉を閉めた部屋で、
ひとりでピアノと向き合ってきました。

 

その時間は、音楽のためだけではなく、
「自分とつながる感覚」を育ててくれたようにも感じています。

 

リビングにピアノを置くことが悪いというわけではありません。

 

ただ、もし「最近、集中力が続かないな」「音にムラがあるな」と感じるようであれば、
“静かに、ひとりで弾ける空間”を、少しだけ意識してみてください。

 

そこには、ピアノの上達だけでなく、
きっとお子さん自身の“心の成長”にもつながる時間が待っているはずです。

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