子どものピアノ練習、“がんばってるのに伸びない・・・”には理由がある

子どものピアノ練習、“がんばってるのに伸びない・・・”には理由がある

 

ピアノ講師として25年以上、さまざまな子どもたちと向き合ってきました。

 

「こんなに練習してるのに、ぜんぜん弾けるようにならないんです」
落ち込む子どもや、心配そうな親御さんの声・・・
ピアノの先生なら、一度は聞いたことがあるかもしれません。

 

もしくは、
「毎日30分は練習してるのに、なかなか上達しなくて・・・」
と、焦りや苛立ちをにじませる親御さんもいるかもしれません。

 

でも、ここでひとつ、問いを立ててみたいのです。
“がんばっている”って、いったい何を指しているのでしょう?

 

小手先の努力論では、心がついてこない

「数をこなせば上達する」
「努力はうそをつかない」・・・
たしかにどれも正論のように聞こえます。

 

でも、ピアノの練習においては、
この考え方だけに頼ると、子どもの心が置き去りになることがあります。

 

たとえば、まだ上手く弾けない部分があるとしても、
本人にとっては「昨日よりリズムがそろった」「つっかえずに通せた」という
“小さなできた!”があるかもしれません。

 

それなのに、大人が
「まだそこ、ミスしてるよ」
「何回も練習してるのに、なぜできないの?」と
“できていない部分”ばかりを指摘すると・・・

 

子どもは、
「がんばってもムダなんだ」
「どうせ、また怒られるし」
と感じてしまいます。

 

心の土台は“肯定感”と“効力感”の2階建て

では、どうしたらピアノの練習を前向きに続けていけるのでしょうか?
それには、「心の土台」が育っていることが必要です。

 

自己肯定感

「できてもできなくても、自分には価値がある」と思える力。
失敗しても「自分を否定しない」土台になります。

 

これがあると、指摘されても受け止められるし、チャレンジする気持ちを保てます。

 

自己効力感

「やればできるかも」と思える“行動のエネルギー”
=過去の成功体験や、乗り越えた経験から育ちます。

 

これがあると、失敗しても「もう一回やってみよう」と思えるんです。

 

自己肯定感は土台、自己効力感はそこに育つ芽のようなもの。
どちらかが欠けていると、「がんばろう」「続けたい」という気持ちは生まれにくいのです。

 

大人が“努力”を決めつけないこと

子どもが努力をしていないわけではありません。
でも、大人はつい、自分の「がんばった基準」で子どもを見てしまいがちです。

 

たとえば・・・

  • 音を間違えずに弾くこと
  • 指づかいが正しいこと
  • 最初から最後まで止まらずに通すこと

 

こうした基準で見ると、
「まだまだだね」「もっとやりなさい」と言いたくなってしまうかもしれません。

 

でも、その前に一度立ち止まってほしいのです。

 

「昨日より少しでも前に進めたところ、あったかな?」
「子ども自身が、ちょっと嬉しそうにしていた場面は?」

 

子どもにとっての“がんばり”は、
結果よりも「過程の中にある成長実感」です。

 

「昨日よりスムーズだったね」
「最後まで集中してたの、わかったよ」
そんなひとことが、自己肯定感と自己効力感の両方を支えてくれるんです。

 

「できた感」を育てる練習の工夫

やみくもに“時間”だけをかけるより、
「できた!」を感じる工夫をするほうが、何倍も効果的です。

 

たとえばこんな方法があります。

  • 1小節だけに集中して、今日は“ここだけ弾けた”を味わう
  • 右手だけ → 左手だけ → 両手にする、という段階的練習
  • ゆっくりしたテンポで、成功体験を重ねる
  • 「あと1回だけね」と明確にゴールを区切る

 

また、子どもが達成感を持ちやすいように、
「ここまで弾けたらOK!」という“小さなゴール”を設定してあげることも大切です。

 

ピアノの練習は、自信の回復と構築の場でもあります。

 

うまくいかなかった日こそ、
「それでもやろうとしていた姿」に光を当てる・・・
それが、心にとっては“練習より大事な時間”かもしれません。

 

まとめ 〜「できた!」を育てる練習へ〜

子どもの「やる気」や「継続力」は、
声かけや練習設計のちょっとした工夫で、ぐんと変わります。

 

大切なのは、「できるようになる」ことよりも、
「できるかも」と思える自分に出会わせてあげること。

 

その感覚があるからこそ、
子どもはピアノを「好き」になっていきます。

 

次回予告

では・・・
具体的にどうやって「できた感」を生む練習ステップを組むのか?

 

どんな声かけが「やる気」と「自信」を引き出すのか?

 

次の記事では、講師や保護者がすぐに使える
「成功体験を生む練習ステップと声かけのコツ」をご紹介します。

▼ 続きは後日公開予定

 

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