今年、あなたのピアノにはどんな時間が流れていましたか?
一年を思い返すとき、
気づくと「できたこと」と「できなかったこと」に
分類してしまう。
反省のクセが出て、
挑戦してきた日のことよりも、
まるで“点数をつけるような振り返り”になってしまうことがあります。
でも、ピアノの成長は、
そのどちらでもありません。
本当にあなたを前へ進めてきたのは、
“その間にあった、小さな気づきや変化の積み重ね” です。
- 思い通りの音が出せた瞬間
- 指が自然に動いた日
- 緊張とうまくつき合えた時間
- 練習が続かなかった時期の気づき
- ふと「楽しい」と思えた感覚
そういったささいなできごとが、
一年を静かに、でも確かに支えてくれていました。
上達していく人たちは、
「できた・できない」を数えるよりも、
その一年にどんな気づきがあったかを大切にしています。
なぜなら、大きな変化は、“結果”ではなく、
その途中で生まれた小さな気づきの積み重ねから生まれるからです。
来年の上達は、その気づきの中に宿っています。
この記事では、
- 上達する人が見落とさない5つの視点
- 誰でもできる “1年振り返りワーク”
をまとめました。
深刻な振り返りではありません。
読むだけで、
来年の練習がやさしく、軽く、そして確実に変わっていく内容にしています。
それでは、一緒に一年の音をたどっていきましょう。
なぜ、ピアノで「1年の振り返り」が大切なのか?
ピアノの成長は、
「弾けた・弾けない」という表面的な結果だけでは判断できません。
1年を静かに振り返ることで、
自分では気づいていなかった “成長の証” が浮かび上がってきます。
そしてこれは、
大人にも子どもにも“自己肯定感”を育てる時間 になります。
ここからは、3つの視点で見ていきましょう。
① 上達は“時間”ではなく“気づき”で決まる
ピアノは、ただ長く練習すれば伸びるわけではありません。
むしろ、ふと気づいた“1つのコツ” が、その後の練習を大きく変えてくれることがあります。
「力を抜くと弾きやすい」
「ここは手首を少し回すと音が安定する」
「このフレーズは、指ではなく腕で運ぶと楽になる」
そんな小さな発見が、
ときに何時間もの練習よりも上達につながることがあるのです。
② 子どもも大人も「成長の実感」がモチベーションをつくる
人が続けられる理由は、
“できなかったこと”ではなく、
“できるようになったこと”に気づけるから。
つまり、成長の実感 = モチベーション。
特に子どもは、
- 弾けた瞬間を一緒に喜んでくれた
- 頑張りを見てもらえた
- できるようになったことを言葉にしてもらえた
・・・これだけで、
次の1年がまったく変わります。
親御さんは、
「何回練習した?」よりも、
「こんな音が出せるようになったね」
「ここ、前よりスムーズに弾けてたよ」
と“変化”に目を向けてあげると、
子どもの自己肯定感と内発的動機づけが育っていきます。
大人の学習者さんも同じで、
達成できたことを書くことで
「まだ伸びていける自分」を信じやすくなります。
振り返りは、
“わたしはちゃんと前に進んでいた” と確認する時間。
これが自己肯定感の源泉です。
③ 悔しかったことは“来年の伸びしろ”になる
振り返りの中で「できなかったこと」が出てきても、
それは弱点ではありません。
むしろ、それが
“来年必ず伸びるポイント” です。
- 速いパッセージが転んでしまった
- 左手が不安定だった
- 本番で緊張した
- 続けられない時期があった
ここにはすべて、
改善のヒントと、成長の芽が隠れています。
そして・・・
「悔しい気持ちをそのまま抱えていた一年」ではなく、
「悔しさの理由に気づいて、一歩踏み出した一年」に変わる。
悔しさは、自己否定の材料ではなく、
自己成長の地図です。
振り返ることで初めて、
来年の練習に“明確な方向”が生まれていきます。
1年を振り返ることは、
上達のためだけでなく、
“自分を丁寧に扱う行為”そのもの。
気づきが生まれ、成長を認め、悔しさを希望に変える。
ピアノは、音だけでなく、
あなたの自己肯定感も育ててくれる楽器です。
今年のピアノを振り返るときの“5つの視点”
ピアノの成長は、
スケールが速く弾けたかどうかだけでは測れません。
大切なのは、
「どんな変化が自分の中で起きていたのか」を見ていくこと。
ここでは、シンプルなのに深く、
自分の成長が一瞬で見える “5つの視点” を紹介します。
書き出すと、
思っている以上に“やさしく前へ進める自分”に出会えるはずです。
① 音の変化
今年、あなたの音色はどう変わりましたか?
- ふとした瞬間に“きれいな音”が出せた
- 和音が濁らなくなった
- レガートが自然につながるようになった
- フォルテが「がむしゃら」ではなく“響き”に変わった
音の変化は、
あなたが気づいていなくても着実に積み重なっています。
ピアノは、“いまの自分” がそのまま音になる楽器。
だから、小さな音の変化は、今年のあなたの成長そのもの。
「1年前、どんな音だったかな?」
と比べてみると、変化が見えやすくなります。
② 身体の使い方の変化
身体は、あなたにとっていちばん身近な“楽器”です。
今年の練習の中で、こんなことに気づきませんでしたか?
- 前より力が抜けた
- 肩が上がらなくなってきた
- 手首がやわらかくなった
- 姿勢を整えると音が変わると気づいた
特に大人の学習者さんは、
「できない=才能がない」ではなく、
できない理由が“身体の使い方”にあることがほとんど。
ここに気づけた人は、
来年、大きく弾きやすさが変わっていきます。
子どもなら、
親御さんが「姿勢がよかったね」「今日は手が軽かったね」と
身体の変化をほめてあげると、自信の土台が育ちます。
③ 心の変化
ピアノは“心の鏡”のような面があります。
今年、あなたの心にはどんな変化があったでしょうか?
- 緊張とどう向き合えるようになった?
- 焦りやイライラが起きたとき、どう回復した?
- 気持ちが沈んだ時期、どうやって戻ってきた?
うまく弾けない日が続いたとき、
あなたはどう心を扱いましたか?
ここは、
あなたのご自愛 × ピアノの世界観が最も発揮される部分。
たとえば・・・
- “できる私” だけを大事にするのではなく、
“できない私” にもあたたかく寄り添えた日があった - 少しだけペースをゆるめることを自分に許せた
- 落ち込むことも、音楽の一部だと理解できた
こうした「心の変化」は、
来年の練習を支える静かな力になります。
そして親御さんであれば、
自分の心の余白が子どもの上達を支えていたこと に気づく方も多いでしょう。
④ 練習習慣の変化
“どれくらい練習したか” ではなく、
“どう取り組めたか”を見る視点です。
- 続いた理由は何だった?
- 続かなかった時期には、どんな状況があった?
- 練習ができた日は、心や環境がどう整っていた?
- 気分が乗らない日は、どんな声かけが自分を助けた?
親御さんの場合は、
あなたの声かけが子どもの練習ペースを作っています。
声かけは、叱咤激励よりも
「がんばってるの、知ってるよ」
「今日はここまでできたね」
という 承認の言葉のほうが、長く続ける力 になります。
練習に“リズムがあった一年”も、
“揺れながら続いた一年” も、
両方とも価値があります。
⑤ 楽しかった瞬間
意外と見落とされがちですが、これはとても大切な視点です。
- この曲が弾けてうれしかった
- レッスンで先生にほめられた
- 自分の音が好きだと思えた瞬間があった
- 子どもの笑顔が見えた
- 家族で聴きあいっこした
“楽しい” という感情は、成長の核心にあります。
なぜなら、楽しい時間こそが、
「また明日も弾きたい」という
前向きな循環の入口になるから。
振り返りでここを書くと、その瞬間の温度が思い出されて、
心の中に静かな光が戻ってきます。
この5つの視点は、
今日すぐに書き出せるほどシンプル。
でも、見えてくるのは一年分の成長です。
こうして振り返ることで、
あなたがどれほど前に進んでいたのか・・・
静かに、確かに見えてきます。
来年の上達が変わる、やさしい“1年振り返りワーク”
多くの人が、振り返りというと
「◯◯ができた」「◻︎◻︎ができなかった」
と、反省会のように“結果”を並べてしまいがちです。
さきほども書きましたが、ピアノの成長は
できた・できないの二択では測れません。
大切なのは、その一年でどんな気づきがあり、
どんな瞬間に心が動いたのか・・・
“自分の内側に起きた変化”をやさしく拾い上げること。
ここに向き合うだけで、
来年の練習の質が驚くほど変わります。
そこでここでは、深掘りしすぎず、誰でも書ける
“やさしい振り返りジャーナリング”を用意しました。
反省ではなく、
「気づき」や「小さな一歩」を見つけるためのワーク です。
肩の力を抜いて、
書けるところだけ書いてみてください。
深刻にならず、1つだけ書いてもOKです。
① 今年、いちばん「音が変わった」と感じた瞬間は?
- どんな曲のどんな部分?
- どんな音色が出せた?
→ 小さな“音色の成功体験”を思い出すだけで、来年の練習が安定します。
② 今年、身体の使い方で気づいたことは?
- 力が抜けた日があった?
- 姿勢や手の形で改善したポイントは?
→ 身体の気づきは“弾きやすさの土台”になります。
③ 練習を続けられた理由は?
(続かない日があったなら、その理由もOK)
- どんなときに練習しやすかった?
- 続いた日には、どんな環境や心の状態があった?
→ “自分に合うペース”がここで見えてきます。
④ 心の変化で覚えていることは?
- 落ち込んだ時、どう戻ってきた?
- 緊張にどう向き合えた?
- 焦りがやわらいだ瞬間はあった?
→ これを書くと「ずっと同じ場所にいたわけじゃない」と理解できます。
⑤ ピアノを弾いていて、今年いちばん楽しかった瞬間は?
- 子どもの笑顔
- レッスンでほめられた日
- “この曲好きだな” と思えたとき
→ “楽しい”は成長の核心。必ず1つ思い出してあげてください。
◆【来年に向けての3つの問い】
振り返りで出てきたことをもとに、
来年の方向性をやさしく描いていきます。
各問いに、例もつけましたので、参考にしてみてくださいね。
⑥ 来年の自分は、どんな“音”を出したい?
- やわらかい音?
- クリアな音?
- 深い響き?
→ 目標を「曲」ではなく「音」で考えると、継続しやすくなります。
⑦ 来年大切にしたい“練習の姿勢”は?
- 焦らない
- 少しずつ
- 弾けない日も責めない
- 週に1回だけでも座る
→ あなたのご自愛の要素を自然に反映できます。
⑧ 来年のピアノで“やってみたい小さな一歩”は?
- 1曲仕上げたい
- 好きな作曲家に挑戦したい
- 子どもと連弾したい
- 発表会に出てみたい
→ “行動に落とせる目標”を1つだけ書くと、年明けが軽くなります。
ピアノの「振り返り」で大切にしてほしいこと
1年を振り返るとき、大切なのは“事実”だけではありません。
ピアノは、音・身体・心・環境、その全部が関係する、奥深い学び。
だから、振り返りでは次の4つをそっと意識してみてくださいね。
① 「続けてこれた自分」を必ず一度、受け取ること
上達した日より、
できなかった日よりも先に大切なこと。
それは・・・
“今年もピアノと向き合ってきた自分”を認めること。
続けることそのものが難しい中で、
あなたは何度も鍵盤の前に座り、
音に向き合ってきました。
この「継続の事実」を受け取るだけで、
来年の土台がぐっと安定します。
② 感情もふくめて「そのときの自分」を否定しないこと
弾けなくて悔しかった日も、
忙しくてピアノから離れた時期も、
全部ふくめて“そのときの最善のあなた”。
振り返りでは、
- 落ち込んだ
- 焦った
- 嫌になった
- 少し距離ができた
こうした感情も書いてOKです。
感情は失敗ではなく、
あなたの成長の軌跡を教えてくれるサイン。
③ 「心地よかった瞬間」を軽視しないこと
上達と関係なさそうに思えて、
実は一番あなたを前に進めてくれるのは
“気持ちが軽くなった瞬間”
“あ、好きだなと思えた時間”
この微細な体験です。
心が動いた瞬間は、あなたの“音の未来”をつくっていきます。
④ 周りと比べないで、「去年の自分」とだけ比べること
SNSも、発表会も、教室の友だちも、
他の人のペースは気にしなくて大丈夫。
振り返りで見るべき相手は、去年の自分だけ。
1年前のあなたが
出せなかった音、感じられなかった変化、
気づけなかったこと・・・
それに今のあなたが気づけているなら、
それだけで十分、前に進んでいる証拠です。
振り返りは「結果の棚卸し」ではなく、
“あなたという真ん中に戻る時間”。
この視点をそっと添えてあげるだけで、
来年の練習は無理なく、しなやかに前へ進みます。
まとめ 〜来年のピアノが変わる、やさしい振り返りのすすめ〜
1年を振り返ることは、
ただ反省点を並べる作業ではありません。
むしろ・・・
「自分が積み重ねてきたもの」に静かに光を当てる時間。
音の変化、
身体の変化、
心の変化、
練習のリズム、
そして“楽しかった瞬間”。
そのどれもが、
あなたが今年、確かに前へ進んでいた証です。
振り返ってみると、
できた日も、できなかった日も、
どちらもあなたを育ててくれた大切な経験だったと気づくはず。
そして来年は・・・
今日書いた小さな気づきが、
あなたの音色を変え、練習の質を整え、
ピアノとの時間をもっと豊かにしてくれます。
大丈夫。
あなたのペースで、
あなたの音で、
また新しい一年を積み重ねていけばいい。
ピアノはいつも、あなたのそばで待っています。
✧˙⁎⋆合わせて読みたい
🎹ピアノが上達する子の特徴5つ|小さな“できた”が未来の音につながる
小さな気づきの積み重ねが、大きな成長の土台になります。
“今日の変化”に目を向けたい方へ。

🎹ピアノが“嫌いにならない子”の育て方|25年の指導でわかった、声かけの魔法5選
親の声かけが、子どもの心の伸びしろをひらきます。
日々の関わりを少しラクにしたいときに。

🎹ピアノのレッスンや本番で起こる“思わぬミス”の原因は?
本番の“あの瞬間”に起きる心の反応をやさしく解説。
緊張と上手につき合いたい方へ。

✧˙⁎⋆noteメンバーシップのご案内
練習の「できた/できない」に振り回されず、
心の土台から整えたい方には、
noteメンバーシップでやさしいジャーナリングワークをお届けしています。
✏️『わたし再発見の時間』はこちら

