誰かへの歌が、わたしへの歌に変わる瞬間〜YOASOBI『ハルカ』の解釈とご自愛の視点

ご自愛の視点で聴く、YOASOBI『ハルカ』

何度も聴いたことのある曲だったのに、
この夏、ふと耳にした瞬間に熱いものがジーンとこみあげてきました。

 

その曲は、YOASOBIの「ハルカ」。

 

その想いは、誰かに向けたものではなく、
「わたし自身」に向けたものでした。

 

日差しの強い午後、窓から差し込む光の中で聴いた「ハルカ」は、
まるで過去の自分が今のわたしにエールを送ってくれているように響いてきます。

 

ピアノや音楽に関わる日々の中で、ときどき自分を責めてしまう・・・
そんな心に、やわらかく寄り添ってくれる一曲だったのです。

 

外に向かっていた歌が、内に届いた日

YOASOBIの「ハルカ」は、小説『月王子』を原作にした楽曲。
大切な存在との思い出や絆が、優しい言葉と穏やかなメロディに包まれて流れていきます。

 

温かな日々の記憶、別れの切なさ、そして「ありがとう」というまっすぐな想い・・・。

初めて聴いたときは、それを“誰か”への愛として受け取っていました。

 

きっと多くの人がそうでしょう。

 

家族や友人、恩師や仲間・・・顔を思い浮かべながら「ありがとう」と口ずさむような、外に向かう温もりの歌。

 

以前のわたしも、そのひとりでした。

 

でも、時が経ち、ある夏の日にあらためて耳にしたとき、
ふと胸の奥で何かが変わったのです。

 

歌詞の「ありがとう」が、まるで自分自身に向けられているように聴こえたんです。

 

それは、過去のわたしが今のわたしにそっとかけてくれていた言葉のようでした。

 

気づけば、歌の矢印が外から内へと、静かに向きを変えていたのです。

 

少し不思議で、でもどこか温かい。

 

その瞬間、曲の意味が“他者への愛”から“自分への愛”へと生まれ変わった気がしました。

 

 

「ありがとう」が、わたしの心に届くまで

だれにも見えないところで
流した涙もほら 今の君につながってる
こみあげてくる 想いはただ ありがとう

その一節が耳に届いた瞬間、胸の奥がじんわりと熱を帯びていきました。
忘れていた景色が、波のように押し寄せてきます。

 

誰にも見せなかった努力、心の中で何度もくり返した葛藤。
どうにもならない悔しさで胸がいっぱいだったあの日々が、鮮やかによみがえってきました。

 

ふりかえると・・・何も変わらないように思えた時期もありました。

 

努力が報われないと感じ、深夜の部屋で言葉にならない想いを胸にしまった夜も。
それでも・・・やめなかった。あきらめなかった。

 

以前のわたしは、そんな自分を
「まだ足りない」と責めてばかりいたのかもしれません。

 

けれど、この歌詞を聴いたとき、
不思議と「よくやってきたね」と心から思えたのです。

 

その“ありがとう”は、誰かに向けたものではなく、
確かに過去の自分へと向けられていました。

 

ご自愛とは、ただ自分を甘やかすことではない。
現状に満足してしまうことでもない。
嬉しいことも、悔しいことも、情けない自分も・・・
すべてを、自分の歴史としてまるごと受け入れること。

 

この曲がそっと背中を押してくれたおかげで、
わたしはようやく、その意味を身体の奥で理解できた気がします。

 

音楽がくれる、“自分と向き合う”ための静かな場所

メンタルコーチとして日々感じているのは、
感情は外に出すことで整理され、
そして少しずつ癒えていくということです。

 

脳の働きとしても、言葉や音楽、絵などで思いを表現すると、
感情を司る「扁桃体」の過剰な反応が落ち着き、
ふっと安心感が広がっていくと言われています。

 

その中でも、音楽はとびきり特別な存在です。
言葉にできない想いを音に託せる。
演奏者でも、聴き手でも、その音の中でなら心をそっと開くことができる。

 

ときに、歌詞やメロディが自分の代弁者になってくれることがあります。
心の奥に押し込めていた感情が、音の揺らぎにほどけていく・・・
そんな瞬間を、何度も経験してきました。

 

ピアノのレッスンでも似た場面に出会います。
一曲に長く向き合ううちに、生徒の中でその曲の意味が変わり、
音色や表情までやわらかく変化していく。

 

「曲と向き合う」ということは、きっと「自分と向き合う」ことでもあるのです。

 

特に大人の学習者にとって、音楽は日常の役割や肩書きから少し距離をとり、
“ありのままの自分”と再会できる時間になります。

 

わたしにとって「ハルカ」を聴く時間も、まさにそうでした。

 

過去の自分の悔しさや努力をまるごと受け入れ、
「よくやってきたね」と静かに声をかける。

 

そんな自己対話を促してくれる、安心できる場所が、
音楽の中には確かに存在しているのです。

 

この曲がそっと教えてくれた、自分を大切にする一歩

音楽は、ときにその意味も響き方も変えていきます。

 

以前は「誰かのための歌」だと思っていた曲が、
ある日ふと、「わたしのための歌」に変わることがある。

 

それはきっと、自分の中の何かが整ったとき、
もしくは変わりはじめたときに訪れる瞬間なのだと思います。

 

「ハルカ」を聴いて感じたのは・・・
今の自分に必要な言葉は、実は外からではなく、
ずっと内側から届いていたということ。

 

歌詞の中の“ありがとう”は、誰かに向けた言葉であると同時に、
自分の奥底から静かに湧き上がってくる言葉でもありました。

 

過去の自分。
努力してきた自分。
迷いながらも歩みを止めなかった自分。
その全部に、そっと感謝を伝える時間。
それが、この曲がくれた“ご自愛の時間”でした。

 

もし今、あなたががんばりすぎて息切れしているのなら・・・

 

「ハルカ」を、自分へのエールとして静かに聴いてみてほしい。
そこには、誰かに支えてもらうような優しさと、
過去の自分に寄り添う温もり、その両方があるはずです。

 

そして、その感覚がほんの少しでも心を軽くしてくれたなら。
そのとき、あなたはもう、自分を大切にする一歩を踏み出しているのです。

 

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