レッスンにならない生徒、いますか?
ピアノのレッスンで、
「今日は全然レッスンにならなかった…」
そんな日、ありませんか?
弾こうとしない、集中が続かない、理由ばかり並べて動かない。
こちらがどれだけ準備をしても、生徒がまったく反応してくれないと、
講師としての心はふっと折れそうになります。
実はこの悩みは、特別なケースではありません。
多くの先生が「どう関わればいいのだろう?」と戸惑い、
ときには自信をなくしてしまうほど深いテーマです。
けれど、長年レッスンに携わってきて感じるのは、
“レッスンにならない生徒”は、必ず何かを伝えようとしている ということ。
表に見える行動は違っていても、その奥には共通する背景があります。
この記事では、
- レッスンにならない生徒に見られる特徴
- 講師がむなしさを感じる理由
- 弾かない・逃げる子の「外側のサイン」
- 今日からできる、小さな工夫と視点の切り替え
などを、25年以上の指導経験をもとにお伝えします。
そのうえで、
「どうすればレッスンが動き出すのか?」
という本質的なヒントへとつながる入口をお届けします。
生徒の行動に振り回されて疲れてしまう日が続いている方へ。
ここで一度、視点と関わり方の“地図”を整えていきましょう。
✦ レッスンにならない生徒の「本当の問題」とは?
ピアノを教えていると、
「今日はレッスンとして成立しなかった…」
そんな日が必ず訪れます。
その状況は、単に“弾かない”というだけではありません。
たとえば、
- 楽譜を開いても手が止まってしまう
- 「できない」「むり」を繰り返して前に進まない
- 途中で「帰りたい」と言ってしまう
- 気持ちが乱れ、ピアノから離れてしまう
- 練習不足の理由ばかり並べ、取り組めない状態が続く
これらはすべて “レッスンにならない状態”のサイン です。
しかし、ここで大切なのは・・・
この状態は、生徒が“ただやる気がない”わけではない ということ。
講師側からは「やる気がないように見える」だけで、
実際には、
- 不安が大きすぎる
- 自分を守りたい
- 失敗が怖い
- 気持ちの整理ができていない
など、子どもなりの理由が背景にあります。
だから、「どうして弾かないの?」ではなく
「この行動は何を伝えようとしているのだろう?」
と視点を変えることが、最初の一歩になります。
レッスンにならない状態が続くと、講師はむなしさや孤独を感じやすくなりますが、
その“行き詰まりの瞬間”には、生徒の成長につながるヒントが必ず隠れています。
ここからは、多くの先生がつまずきやすいポイントである
「講師がむなしさを感じる理由」 を整理していきます。
✦ 講師が“むなしさ”を感じてしまうのは、自然なこと
「この子のために…」と準備をしても、
思うようにレッスンが進まない日が続くと、
講師の心はふっと疲れを抱えます。
- どう声をかけても反応がない
- 弾こうとせず、理由ばかり並べられる
- 「帰りたい」と言われてレッスンが止まってしまう
- 生徒の気持ちが見えず、励ましの言葉が届かない
こんな状況が積み重なると、
「今日は何もできなかった…」
というむなしさが胸に残るのは、とても自然なことです。
実際、25年以上の指導経験の中で出会った多くの先生が、
同じ場面でつまずき、同じ感情を経験してきました。
むなしさを感じる背景には、いくつかの共通点があります。
① 自分の「努力が報われない」と感じてしまう
講師は、準備も工夫も“生徒のために”行っています。
その思いが受け取られないと、心が折れそうになるのは当然です。
② 生徒の反応が読めず、関わり方に迷いが生まれる
何が正解なのか見えないと、
自分の指導そのものに自信が揺らぎます。
③ 「もっといいレッスンをしたい」という思いが強いからこそ
むなしさの裏側には、
深い責任感と、誠実さ が必ずあります。
生徒の成長を願う気持ちが強いほど、
「うまくいかなかった」と感じる場面は苦しくなりがちです。
でも、ここで一つだけ知っておいてほしいことがあります。
講師が感じるむなしさは、
その子に真正面から向き合っている証拠。
そしてその感情は、
ただ消耗するだけのものではなく、
関わり方を見直すための大切なサイン でもあります。
ここからは、
“レッスンにならない生徒”に共通する 外側のサイン を整理し、
対応の糸口をつくっていきます。
✦ 弾かない・逃げる子に共通する「外側のサイン」
レッスンにならない生徒と言っても、
その行動は一人ひとり違って見えます。
しかし、25年以上の指導経験の中で、
“外側に現れるサイン”は大きくいくつかのタイプに分けられることがわかってきました。
まずは、生徒の行動を「見たまま」で整理してみましょう。
ここを押さえるだけで、その後の関わり方がぐっと楽になります。
① とにかく“弾こうとしない”タイプ
- 楽譜を開いても固まってしまう
- 鍵盤に触れる前から「できない」と言う
- 手が動く前に気持ちがストップしてしまう
講師から見ると“やる気がない”ように見えても、
実際には 不安や失敗への怖さが先に立つ 子に多いサインです。
② 言い訳や理由を並べる“口が先に動く”タイプ
- 「忙しかった」「宿題が多かった」と練習できない理由が続く
- 注意するとさらに言い訳が増える
- アドバイスを受け取る余裕がない
これは、自分を守るための“防衛反応”が強い ときに表れることが多いです。
③ 途中でレッスンから離れてしまう“逃避”タイプ
- 気持ちが高ぶりすぎて椅子に座っていられない
- 「帰りたい」「もう無理」と言って動けなくなる
- ピアノの下や部屋の隅に行ってしまう
これは 感情の波が大きく、切り替えが難しい子 によく見られるサインです。
④ 自己流で進めたがる“マイペース”タイプ
- 指摘しても反応が薄く、同じ弾き方を続ける
- 「こうしたい」という思いが強く、協力関係がつくりにくい
- レッスンの意図がすれ違いやすい
講師は「聞いてくれない」と受け取りがちですが、
裏には “コントロールされるのが苦手” という気質が隠れていることがあります。
⑤ ネガティブが先に出るタイプ
- 「どうせできない」「むり」など否定的な言葉が多い
- 小さな失敗でも気持ちが大きく揺れる
- 自信のなさが行動に大きく影響する
これは 自己肯定感が揺らいでいるときの典型的なサイン です。
こうして“外側の行動”を整理していくとわかるのは、
どのタイプにも共通しているのは、
✦「弾かないこと自体」が問題ではない
✦「弾けない状態にさせている理由」が別にある
ということ。
ここから先は、
外側の行動の背景にある“内側の理由”を、
やさしく紐解いていきます。
✦ 生徒の行動の裏にある心理
“弾かない・逃げる・理由を並べる”・・・
こうした行動の背景には、必ず その子なりの「心の動き」 があります。
表面だけを見ると「やる気がないように見える」かもしれませんが、
その奥には、子どもが自分を守るために選んだ“理由”が隠れています。
ここでは、その心理の“入り口”だけを簡単に整理してみますね。
① 不安が強いと、身体も心も固まってしまう
- 「間違えたらどうしよう」
- 「怒られるかもしれない」
- 「失敗したくない」
こうした不安が強い子は、
挑戦する前に心がブレーキをかけてしまう ことがあります。
弾かないのではなく、“弾けない状態”になっているのです。
② 「できない自分」を見せたくないという防衛
- 否定されたくない
- 比較されたくない
- がっかりされたくない
子どもは、うまくいかない自分を見せるのがとても怖いもの。
だからこそ、先に否定したり、理由を並べたりすることで、自分を守ろうとする ことがあります。
③ 感情の波が大きく、自分で切り替えができない
- 気持ちがあふれてしまう
- 思考より先に感情が動いてしまう
- 「やりたい/やりたくない」の変動が激しい
子ども自身も“どうしていいかわからない”まま、
行動が先に出てしまうタイプです。
④ 自分のペースを大切にしたい
- 指示されると抵抗を感じる
- 納得しないまま行動できない
- 「自分で選びたい」という気持ちが強い
協力していないように見えても、
“自分の感覚で進みたい”という気質があるだけの場合もあります。
こうした心理を知ることは、
生徒の行動を「問題」としてではなく、
“その子からのメッセージ” として受け取るための小さな第一歩です。
ただし・・・「心理を知る」だけでは、レッスンは変わりません。
行動の背景を理解した上で、
講師がどんな在り方でその子と向き合うか・・・
ここが変わると、レッスンの空気は大きく動き始めます。
次は、今日から使える“小さな外側の工夫”を紹介し、
その先の本質的な関わり方へとつながる入口をつくっていきます。
✦ 今日からできる“外側の小さな工夫”
生徒の行動の背景には理由がありますが、
まずは 講師がその場でできる“小さな工夫” から取り入れるだけで、
レッスンの空気は驚くほど変わります。
ここでは、レッスンが止まりそうな瞬間に使える、
シンプルで即効性のある関わり方をご紹介しますね。
①「弾かせる」前に、まず安心の土台をつくる
生徒が固まってしまったときは、すぐに弾かせようとするよりも、
- ゆっくり姿勢を整える
- 深呼吸を促す
- 楽譜を一緒に眺める
など、“始める前の準備”に少し時間を使う方が、結果的にスムーズ です。
安心が戻ると、自然に手が動き始めることがあります。
② 選択肢を渡して“主導権の一部”を生徒に返す
「この曲をやろう」ではなく、
「ここから始める?それともこっちにする?」
と 選べる形 にすると、抵抗が減る子が多いです。
- スタート位置を選ぶ
- どちらの手から始めるか選ぶ
- 弾く量を選ぶ(1小節だけ/右手だけ など)
選択肢は、子どもに 安心と参加感 をもたらします。
③ 感情が揺れているときは、レッスンの“目的”を切り替える
弾ける状態ではないとき、
無理に進めるほどレッスンは止まっていきます。
そんなときに有効なのが、
- 音を1つだけ鳴らして終わりにする
- 先生が弾いてあげて、聴き役になってもらう
- 一緒にリズムを叩くだけにする
など、その日のハードルを大きく下げること。
「今日はこれでOK」という経験が積み重なると、
生徒の心の負担が徐々に軽くなります。
④ “できた瞬間”を、ほんの少し大げさに喜ぶ
生徒が一歩動いた瞬間は、
成長の芽が顔を出した合図です。
- 指が動いた
- 座ってくれた
- 1音だけ弾けた
その小さな変化に講師が気づき、
丁寧に言葉にして伝えることで、
生徒の自己肯定感がふっと上がります。
この積み重ねが、行動の変化につながる大切なステップです。
⑤ 講師自身が“落ち着いたペース”で関わる
生徒の感情が揺れるほど、
講師の心もつられて揺れやすくなります。
しかし、講師が焦るほど、
生徒はさらに不安になり動けなくなることも。
- 声のトーンを落とす
- 話すスピードをゆっくりにする
- “間”を意識する
こうした 小さな“落ち着き”の演出 が、
生徒の安心につながり、レッスン全体の雰囲気を整えます。
これらの工夫だけでも、
レッスンが一歩前に進む場面は増えていきます。
ただし、本当にレッスンが動き始める瞬間は、
子どもの“内側”と、講師の“在り方”がふれたとき。
ここから先が、レッスン全体を変える本質的な部分です。
✦ ここから先は、“講師の在り方”がレッスンを変えていく
「弾かない」「逃げる」「できないと言い続ける」・・・
こうした行動の背景には、
子ども自身も言葉にできない“心の守り方” が隠れています。
そして、レッスンが動き出すかどうかは、
講師がどんな言葉をかけるか以上に、
どんな“在り方”でその子の前に立つか に左右されます。
たとえば・・・
- 子どもが不安でいっぱいのとき
- 自信がゼロのとき
- 失敗を極端に怖がっているとき
- 気持ちをどう処理していいかわからないとき
無理に弾かせようとするほど子どもは固まり、
安心が広がるほど、自然と前に進みはじめます。
これは25年以上レッスンをしてきて、何度も感じてきたことです。
この先のパートでは、さらに深く踏み込みます。
ここでお伝えした内容は、「レッスンにならない生徒」がどう見えているのか、
その背景にどんな心理があるのか・・・
という“外側の整理”まで。
この先の note記事では、
- 子どもが“なぜその行動を選んだのか”を読み解く視点
- 言葉にならない気持ちをほどくための3つのステップ
- レッスンの空気をやわらかくする講師の在り方
- 親御さんとの連携がなぜ大切なのか
- 講師自身が疲弊しない心の整え方
など、行動が変わる“根本”の部分 を丁寧に解説しています。
「無理に弾かせようとして苦しくなる」日々から、
「この子のペースで、確実に進める」レッスンへ。
そんな変化のプロセスを、実体験とともにまとめました。
続きは noteの有料パートで読めます。
ここから先は、生徒の行動が変わりはじめる具体的なプロセス と、
講師が自分の心をすり減らさずに向き合う方法 の章です。
興味のある方は、こちらから続きをお読みくださいね。
👉 【ピアノレッスン】“弾かない子・逃げる子”との向き合い方。講師歴25年の実体験と気づき
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講師目線でわかりやすく整理した記事 です。
「どこに注目してレッスンを組み立てればいいか?」が、きっと見えてきます。


